ヘル・ボルハルト・ゼリンスキー反応(Hell-Volhard-Zelinsky-reation)【反応機構も解説】

化学

Hell-Volhard-Zelinsky反応とは?

Hell-Volhard-Zelinsky反応の読み方は、ヘル・ボルハルト・ゼリンスキー反応(ヘル・フォルハルト・ゼリンスキー反応)と読みます。

アルデヒドやケトンと同様に、アルカン酸を臭素(Br₂)と反応させることによって、α炭素モノブロモ化する反応です

この反応の出発物質はアルカン酸、臭素(Br₂)に微量のリン(P)を加えて、リンはすぐに臭素によってPBr₃に変換され、反応が進行します。

反応の歴史

Hell-Volhard-Zelinsky反応はドイツ/シュツットガルト大学教授Carl M. Hell(1849~1926)、ドイツ/ハーレ大学教授Jacob Volhard(1834~1910)、ロシア/モスクワ大学教授Nicolai D. Zelinsky(1861~1953)の3人の研究者の名前をとって命名されました。

反応機構

step1

三臭化リン(PBr₃)はルイス酸とルイス塩基両方の性質を併せ持ちます。

そのため、今回はPBr₃がルイス酸として反応し、臭化物イオンが脱離します。

 

step2

step1で脱離した臭化物イオンがカルボキシ基の炭素に攻撃します。

 

step3

step2,3合わせて、付加ー脱離機構といいます。

この付加ー脱離機構によって、臭化アシルが生成します。

 

step4

step3で生成した臭化アシルは酸であるHBrによって、エノール化します。

 

step5

step4で生成したエノールが臭素を攻撃し、α位が臭素化され臭化2-ブロモアシルが生成する。

 

step6:交換反応

カルボン酸と比較して臭化アシルは電気陰性度の大きいブロモ基により、カルボニル基の炭素がより強く正に分極しています。

なので、臭化アシルは未反応のカルボン酸と交換反応をおこすため、まず上記の反応が起こります。

 

step7

step6,7のカルボン酸と臭化アシルの交換反応を経て、ブロモカルボン酸が生成します。

反応の活用

Hell-Volhard-Zelinsky反応により生成するブロモカルボン酸はSn2反応を介して、臭素が置換され他の2-置換誘導体に変換することができます。

したがって、アミンと反応させることによりα-アミノ酸合成することができるため大変有益な反応となっています。

反応の注意点

反応の原料である三臭化リンは水やアルコールと激しく反応し、分解すると毒性のある臭素を発生させることに注意してください。

なので、Hell-Volhard-Zelinsky反応においては、臭素存在下において少量の赤リンを加えることによってPBr₃に変換します。

反応例

プロパン酸のモノブロモ化

このようにアルデヒドおよびケトンのエノールを中間体とするα位のブロモ化と同様に、Hell-Volhard-zelinsky反応を用いることで、プロパン酸をモノブロモ化することができます。

参考書籍

基礎

ビギナーズ有機化学は電子の移動する理由などの概念が丁寧に書かれていて、有機化学を暗記科目から理解し、深める科目に変えてくれる教材です。

ビギナーズ有機化学で電子の動き方など理解できれば、Hell-Volhard-Zelinsky反応も覚えずに反応機構をかけると思います。

ビギナーズ有機化学第2版 [ 川端潤 ]

標準

ボルハルト・ショアーはイラストが丁寧で有機化学を視覚的に理解したい方にオススメです。

Hell-Volhard-Zelinsky反応についても分かりやすく解説します。

国立大学や難関私大の教材としても知られています。

 

ボルハルト・ショアー現代有機化学<上>

ボルハルトショアー 現代有機化学 上 / K・ピーター・C・ヴォルハルト

 

ボルハルト・ショアー現代有機化学<下>

現代有機化学(下)第6版 [ K.ピーター・C.ヴォルハルト ]

応用

ウォーレンは上記2つでは詳しく解説されていない立体化学について解説されています。

東大をはじめとする大学で使われています。

 

ウォーレン有機化学<上>

ウォーレン有機化学(上)第2版 [ ジョナサン・クレイデン ]

 

ウォーレン有機化学<下>

ウォーレン有機化学(下)第2版 [ ジョナサン・クレイデン ]

参考文献

  1. Hell, C. Ber. Dtsch. Chem. Ges. 188114, 891-893.
  2. Volhard, J. Justus Liebig’s Ann. Chem. 1887242, 141-163.
  3. Zelinsky, N. Ber. Dtsch. Chem. Ges. 188720, 2026.
  4. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/9780470638859.conrr305

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化学有機化学
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